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来から数値シミュレーションが積極的に用いられて来た。超大型浮体まわりの海水環境を考察する場合も例外ではなく、数値シミュレーションを積極的に利用することが考えられる。
そこで本論文では、中央に浮体を配置した矩形湾という理想化された条件のもとで数値シミュレーションを行う事により、超大型浮体による海面遮蔽効果が周囲の水塊の挙動に与える影響について考察することとした。日本近海においては、季節により気温・湿度などの気象にかなり違いが見られるため、本論文では例として大阪湾付近の夏季(7月)および冬季(1月)の2種類の気象条件を与えて数値シミュレーションを行い、超大型浮体の存在による日射および風応力の遮蔽が浮体周囲の流況等に及ぼす影響について考察する。
2 現象のモデル化
以下に、数値計算プログラムに用いる方程式系を示す。解法の詳細については、文献1)を参照のこと。
2.1 支配方程式
座標系は、平均水面をx-y平面とし、鉛直上方をz軸の正方向とするデカルト座標系を用いる(Fig.1)。

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Fig.1: Coordinate system

流れ場の支配方程式は、以下の通りとする。

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μ、υ、ωはそれぞれx、y、z方向流速、ζは海面変位、Sは塩分、Tは水温である。AM、KMは水平方向・鉛直方向渦動粘性係数、Ac、Kcは水平方向・鉛直方向渦動拡散係数、fはコリオリパラメーターである。ただし、以下に示す具体的数値シミュレーションでは、コリオリカは考慮に入れていない。また、KM,KCについては、成層化関数による以下の表現を適用する2)。

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ここで、KM0は中立状態での鉛直渦動粘性係数あり、Riは次式であらわされる勾配型リチャードソン数である。

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ここでUは流速のベクトルをあらわす。δは鉛直混合をあらわすパラメータで、

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である。
浮体は、海面の動きに従って上下に運動し、喫水は変化しないものとする。浮体表現の詳細については文献3)を参照されたい。以上の式を、スタガードメッシュによる多層モデル(レベルモデル)を適用して離散化する。
2.2 海面の境界条件と浮体の取扱い
海面の境界条件として、風によるせん断力(τx,τy)、海面における熱・塩分の流入量QT,QSを、以下のように与えることにする。まず、τx,τyについては

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とする。ここで、ρaは大気密度、Cdは抵抗係数、(Wx,Wy)は海水に対する風の相対速度である。また、海面における熱流入量QTは、以下の式により求める。)

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